建設現場では、工程の遅れや急な施主からの要請により、予定していた連休中に急遽出勤となるケースが珍しくありません。
「別の日に休みを取ればいいや」と軽く考えて対応していると、思わぬ残業代(割増賃金)の未払いトラブルに発展することも……。
今回は、夏季休暇中の出勤を例に、「有給休暇・代休・振替休日の正しい扱い方」と「連休明けに企業が注意すべき労務管理のポイント」を現場の具体例で分かりやすく解説します。
【建設業の労務】「早朝積込」「現場の待ち時間」「移動時間」残業時間の集計はどうなる? 【工事あるある①】
【建設業の労務】「早朝の積み込み」「現場の待ち時間」「移動時間」残業時間計算の解答 【工事あるある②】
【現場事例】夏季休暇の5日前、急な休日出勤が決まったら?
株式会社★★★(架空の会社)の夏季休暇まであと5日。
就業後に若手社員の馬場さんが、スマホで夏休みの予定を確認していると……。
高田さん:「悪いけど、夏休みの最初の2日間、△現場に行くことになったからよろしく」
馬場さん:「何ですって!勘弁してくださいよ、夏休みの予定があるんですよ〜」
高田さん:「パチンコだろ?」
馬場さん:「パチスロですよ」
高田さん:「泊まり?観光地?」
馬場さん:「家の近所です……あれ」
高田さん:「じゃあ別の日に休みを取ればいいね。よろしく」
こうして、馬場さんは夏季休暇中に出勤することになりました(高田さんも)。
工事現場では急なスケジュールの変更がつきものですが、高田さんの言う「別の日に休みを取れば良い」とは、法的にどのような扱いになるのでしょうか?
クイズ①:会社の指示による出勤。どの休みを適用するのが適切?
年間カレンダー等で夏季休暇があらかじめ決まっている場合、以下のどちらを適用するのが好ましいでしょうか?
- 有給休暇を取得する
- 代休もしくは振替休日を取得する
【正解と解説】
正解は「2. 代休もしくは振替休日を取得する」です。
本人の希望で有給休暇を振り替えることも制度上不可能ではありませんが、今回は「会社の指示」による休日出勤です。社員が本来自由に使うべき有給休暇を会社都合で消費させるのは好ましくありません。
したがって、会社は「代休」または「振替休日」を与える対応が必要となります。
クイズ②:「休日出勤する」前に替わりの休みを決めた場合はどちら?
夏季休暇の3日前。高田さんと馬場さんは、出勤日についての打ち合わせを行っています。
高田さん:「これで事前準備と確認事項は終わりだ。あとは当日現場に行くだけだな」
馬場さん:「2日で終わる工事内容で良かったですよ」
高田さん:「ところで、代わりの休みはいつにする?」
馬場さん:「そうですね〜。じゃあ夏休み明けの初日と2日目を代わりに休みたいです」
高田さん:「その日は両方とも現場もないし、俺もそうするわ」
高田さんと馬場さんの「代わりの休み」が無事に決まりました。では、この休みは次のどちらに該当するでしょうか?
- 代休
- 振替休日
【正解と解説】
正解は「2. 振替休日」です。
両者の決定的な違いは「あらかじめ休日を入れ替えたか(事前決定)」か、「休日出勤した後に休ませたか(事後決定)」にあります。
- 振替休日(事前決定): 休日出勤をする前に、替わりの休日を具体的に決めておくこと。
- 代休(事後決定): 休日出勤をした後に、替わりの休日を与えること。
💡 割増賃金(残業代)の発生に注意!
この2つは、割増賃金が発生するかどうかという点で大きな差が出ます。
- 振替休日の場合: あらかじめ労働日と休日を入れ替えているため、出勤した日は「通常の労働日」となり、原則として休日出勤の割増賃金(35%増)は発生しません。(※ただし、同一週内で週40時間を超えた場合は時間外労働としての割増が発生します)
- 代休の場合: 出勤した日はあくまで「休日出勤」扱いとなります。後から別の日に休ませたとしても、休日出勤したこと自体は消えないため、休日出勤の割増賃金の支払いが必要になります。
事前のアナウンスや手続き一つで労務コストが変わるため、現場での運用ルールを徹底しておくことが重要です。

企業が注意すべき「夏季休暇明け」の労務管理3つのポイント
長めの連休が明けた直後は、職場環境や社員のコンディションが変化しやすいため、以下の3点に特に注意して管理を行いましょう。
- 労災事故の防止(休みボケ・熱中症・メンタル不調)連休明けは集中力が低下しやすく、建設現場での事故リスクが高まります。朝礼での注意喚起や体調管理(熱中症対策含む)を徹底しましょう。
- 有給休暇(計画的付与など)の残日数確認大型連休に絡めて計画有給などを取得させている場合は、各社員の有休残日数を改めてチェックし、管理簿を更新しておきましょう。
- やむを得ない休日出勤の「割増賃金」の正確な把握連休中に急遽出勤が発生した社員については、上記で解説した「振休・代休の扱い」を正しく分類し、給与計算への反映漏れを防ぎましょう。
まとめ
急な休日出勤が発生した際も、事前のちょっとした声かけやルール決め(振替休日の指定など)をしておくことで、無駄な労務トラブルや予期せぬコスト増加を防ぐことができます。
そして何より、連休中に現場を守ってくれた社員へ「休日出勤ありがとう」と感謝の言葉を伝えることが、エンゲージメントや安全意識の向上につながります。
適切な労務管理を行い、万全の体制で連休明けを迎えましょう!
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