工事の待ち時間は労働時間?現場でよくある5つの誤解

建設業や設備工事などの現場では、「材料が届かない」「前の工程が終わらない」「天候不良で待機」といった“待ち時間”が日常的に発生します。
この「待っている時間」は労働時間に含まれるのか?──実はここに多くの誤解があります。
今回は、現場でよく見られる“労働時間の勘違い”を5つに分けて解説します。
(昨年の6月も同様な記事を掲載しておりますが、具体性を加味した内容にしました)
誤解①:仕事をしていない=労働時間じゃない
最もよくある誤解が、「手を動かしていない=労働時間ではない」という考え方です。
しかし労働基準法では、“使用者の指揮命令下にある時間”を労働時間と定義しています。
つまり、たとえ何もしていなくても「現場に居て、指示を待っている」状態であれば、労働時間に該当するのが原則です。
誤解②:雨の日に現場で待機→労働時間にしなくていい?
雨天で作業が止まり、事務所や現場で待機させている間も、「いつでも作業再開できるように待っている」状態なら、やはり労働時間です。
逆に、「帰っていいよ」と完全に自由を与えている場合は労働時間に該当しないケースもあります。
ただし、その判断が曖昧だとトラブルになりやすいため、待機時間の扱いを就業規則等で明確に定めておくことが重要です。
誤解③:昼休憩中に材料が届いたら作業再開→休憩扱いになる?
「12:00〜13:00は昼休憩」と定めていても、材料が届いたからと途中で作業をさせた場合は、そこからは労働時間になります。
法的な「休憩時間」とは、労働者が“自由に使える時間”である必要があります。
途中で中断された場合は、適切な代替休憩を与えることが求められます。
誤解④:元請の現場監督が「何もしなくていい」と言ったから労働時間じゃない?
現場で「今日はもう待機でいいよ」「車で寝てて」と言われたとしても、会社の指示で現場に居続ける必要がある限り、それは“労働時間”です。
「自由に帰宅していい」「待機してもしなくてもいい」といった裁量が与えられていない限り、自己判断で労働時間から外すことはできません。
誤解⑤:労働時間か休憩時間なのかは、会社が決めていい?
労働時間の解釈は、法律と裁判例によって定義されており、会社が「この時間は労働時間ではない」と決めることはできません。
万が一、未払い賃金の請求を受けた場合、「何を根拠に労働時間ではないと判断したか」が問われます。
そのため、現場の実態に即した勤怠ルールの整備と従業員への説明が欠かせません。
対策① 社内規定の見直しをする
現場での“待ち時間”の扱いは、労務トラブルの火種になりやすいグレーゾーンです。
労働時間の解釈は一歩間違えると「未払い残業代請求」や「労基署の是正勧告」に直結するリスクがあります。
就業規則や勤怠管理の見直しを通じて、「どこまでが労働時間か?」を明文化しておくことが安心経営の第一歩です。
対策② どうすれば「労働時間ではない」と言えるのか?
「待ち時間は労働時間ではなく、休憩時間だ」と会社側が主張するためには、どのような条件を整える必要があるのでしょうか?
労働基準法上の「休憩時間」として認められるためには、以下のような**“自由利用が保障されている状態”**を確保する必要があります。
✅ 休憩時間にするためのポイント例:
- 上位者から明確に「○時〜○時までは現場を離れてよい」と伝えられている
→ 例:元請の現場責任者から「10時〜14時までは現場に来なくて良い」と連絡がある。 - その時間帯に何をしても良い(例えば昼食・外出・仮眠など)とされている
→ 「車で待機してて」ではなく「自由に外出OK」と伝える - 連絡が来るまで完全に自由行動できる状態である
→ ただし、「呼び出しがあればすぐに戻るように」とされている場合、その連絡が来た時点からは労働時間が再開する
こうした条件が明確になっていれば、その時間は「休憩時間」として扱いやすくなります。
逆に、待機命令が曖昧だったり、現場に縛られていたりすると、「自由な休憩」とは言えず、労働時間と判断されやすくなります。
最後に
現場の待ち時間を「労働時間」とするか「休憩時間」とするかは、何を許可し、どこまで自由にさせているかにかかっています。
事業主としては、「使用者の指揮命令下にあるかどうか」を基準に、あらかじめ現場ごとの待機ルールを整理しておくことが重要です。
就業規則や雇用契約書に、待機時間・休憩時間の扱いについてあらかじめ明記しておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
さくらい社労士FP事務所では、現場に合った就業規則の整備や勤怠ルールのご相談も承ります。お気軽にご相談ください。
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