2024年改正雇用保険法について① 自己都合離職者の給付制限が緩和が、企業と従業員に与える影響とは?
2024年5月10日、改正雇用保険法が成立しました。
この改正では、多様な働き方の広がりを支える雇用のセーフティーネットとしての役割を果たし、
政府が掲げる「人への投資」の強化を目的に、対象となる被保険者の拡大や給付制限の見直しなどが行われます。
今回の記事では、2024年5月の改正法や直近に施行予定の中から、
企業や従業員への影響が特に大きいと思われる、自己都合離職者の給付制限の改正内容について解説します。
自己都合離職者の給付制限が緩和されます。(2025年4月施行)
雇用保険の基本手当には、正当な理由がなく自己の都合で離職した者に対して、原則2か月間の給付制限があります。
(以前はさらに長くて3カ月の給付制限でした)
これは、自ら失業状態を選ぶのは労働の意思がないからであり、そのような者に基本手当を支給することは就業の促進を目的とする雇用保険の理念に反するからです。
しかし2025年4月からは、原則2カ月の給付制限が1カ月に短縮されます。
さらに、離職期間中や離職日前1年以内に教育訓練給付制度を利用し教育訓練を行った場合は、給付制限が解除されます。
企業や労働者への影響は
自己都合離職者の給付制限が1ヵ月に短縮されると、企業にはどのような影響があるかを以下に記載致します。
私が初めて離職した1990年は給付制限は3カ月もありましたし、昨年の離職時でも2カ月あったので、
1ヵ月の給付制限なんて無いようなものです(個人的な見解です)
企業への影響① 離職者の増加
給付制限が1ヵ月に緩和されることで、離職のリスクを軽減し、自己都合での退職が増える可能性があります。
厚生労働省の調査では、2020年3月卒業者の就職後3年以内の離職率は、新規高卒者37% 新規大卒者32%となっておりますので、この数字は増加する可能性が高いと思われます。
企業への影響② 人材管理の見直し
離職者が増加することにより、企業は人材管理や雇用契約の見直しが必要になるかもしれません。
特に、従業員の離職防止策を強化する必要があります。
潜在的な離職希望者を普段から把握できるよう、コミュニケーションを図ることは必須と思います。
企業への影響③ 採用コストの増加
離職者の増加に伴い、新たな人材を採用するためのコストが増加する可能性があります。求人広告、面接、トレーニング等のコストが上昇します。
最近はリスキリングやキャリアアップを意識されている方が多いので、意欲のある人材に対してバックアップをされている企業も増えております。
企業への影響④ 企業イメージの変化
離職率の上昇は企業のイメージに影響を与える可能性があります。
特に、離職が頻繁に発生する企業は、従業員の満足度や働きやすさに対する疑問を抱かれるかもしれません。
労働者への影響① 経済的安定性の向上
自己都合離職者に対する給付制限の緩和により、経済的な安定性が向上し、次の職を探すまでの期間に安心感が得られます。
労働者への影響② 転職のハードル低下
離職後の経済的なリスクが低減することで、労働者は転職をしやすくなります。
これにより、自分に合った職場を見つけやすくなります。
労働者への影響③ スキルアップの機会増加
離職後に失業給付を受けることで、スキルアップや再教育のための時間を確保しやすくなります。
ハローワークが行う教育訓練等は結構充実しているので、失業者だけではなく勤務中の方が利用できるのもあります。
まとめ
このように、雇用保険改正による自己都合離職者の給付制限の緩和は、企業と労働者の双方に対してさまざまな影響を与えることが予想されます。それぞれの立場でのメリットとデメリットを理解し、適切な対応を行うことが重要です。
今回の改正は、労働者側に転職の機会が増える可能性が高いため、
各企業は、①離職の予防 ~ 人材流出の防止
②新たな人材採用 ~ 選ばれる企業 などの対応が必要となります。
厚生労働省の「令和3年雇用動向調査結果の概要」によると、
離職率 男性12.8% 女性15.3% 合計13.9% となっているので、
1年間に100人中13人以上が退職となっています。
もちろん各企業で事情は異なると思いますが、貴重な人材が流出することは避けなければなりませんし、
人材の流動化が一般的になれば、求職者から選ばれる企業になるような対策が必要になります。
今回の記事以外にも、雇用保険法にはさまざまな改正が予定されています。
内容によっては企業や従業員に大きな影響があるものもありますので、
事前に把握することをおすすめします。
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